cross14_head

小型衛星カンサットで広がる宇宙への夢。

座談会スタイルでつなぐ、NBUトークマガジン。今回は、日本屈指のロケットコンテスト「第12回能代宇宙イベント」で全国から集まった強豪チームを圧倒して、3連覇を成し遂げたカンサットプロジェクトチームが登場。到達距離0.0mの偉業を達成したメンバーの開発プロジェクトストーリーをじっくり語ってもらいました。

0142016 OCTOBER

超小型人工衛星「CANSAT(カンサット)」とは?

空き缶サイズの小型衛星で「Can(缶)Satellites(衛星)」の略語。宇宙技術の教育を目的として、小型衛星開発に必要とされる技術を用いて製作する空き缶サイズの小型の模擬人工衛星である。競技は、電源、GPSなどを搭載した自走式探査車(ローバー)が入ったカンサットを空中から投下し、落下地点からローバーが目標地点にどれだけ近づけるかを競う〔ランバック部門〕と、自律飛行型機体で直接、目標地点を目指す〔フライバック部門〕がある。国内では種子島ロケットコンテスト(鹿児島県)と能代宇宙イベント(秋田県)が有名であり、NBUカンサットプロジェクトチームはどちらの大会でも〔ランバック部門〕で優勝実績のある全国屈指の強豪チームである。

プレッシャーと闘いながらの3連覇。

岡崎 「第12回能代宇宙イベント」ランバック部門での3連覇おめでとう。連続優勝のプレッシャーもかなりあったと思うけど、よく頑張ったね!

中山 ありがとうございます。そうですね、能代の大会は東日本で開催されたので、関東の東京大学や早稲田大学、慶応義塾大学をはじめ、全国各地の強豪校が出場しており、その中で優勝できたのはすごく嬉しかったですね。

福守 連続優勝記録を終わらせるわけにはいかないというプレッシャーも大きく、優勝したときは正直ほっとしました。

椎原 今回は、目標の0・0m(ゼロ距離)の記録を達成できたことが何よりも嬉しかったですね。自分たちだけの力ではなく、先輩たちから受け継いだ技術とチームワークで勝ち取った成果だと思います。

中山 今大会は〝3連覇〟という目標のほかに、フライバック部門への挑戦ということにも大きな意味がありました。メンバーの大半が航空宇宙工学科に在籍しているので、固定翼形式の機体を飛行させることはプロジェクトチームの悲願でした。

岡崎 フライバック部門では、翼展開ができず、記録を出せませんでしたが、あと少しの改良で良好な滑空ができる段階まできていることは実感できたね。

各グループから課題と解決策、作業スケジュールなどを細かく報告。ミーティングは深夜まで続くことも。

各グループから課題と解決策、作業スケジュールなどを細かく報告。ミーティングは深夜まで続くことも。

〔ランバック部門〕〔フライバック部門〕それぞれのメンバーで健闘をたたえ合い、優勝を喜ぶ至福の瞬間。

〔ランバック部門〕〔フライバック部門〕それぞれのメンバーで健闘をたたえ合い、優勝を喜ぶ至福の瞬間。

それぞれの個性を生かし、チームに貢献する。

福守 僕はたまたま入学式のサークルの勧誘などでもらったビラの中に、カンサットプロジェクトを見つけ、面白そうだなと思い参加してみることにしました。

椎原 福守くんは、1年の頃からプロジェクトに参加していたので、勝ちたいという思いも人一倍強かった思います。私は工業高校出身なので、高校生の頃からカンサットの開発に興味がありましたが、チームに入るタイミングを逃してしまいました。2年生の前期に別プロジェクトのことで岡崎研究室に相談に行った際、当時のプロジェクトリーダーから「興味があるなら参加してみない?」と誘ってもらったのがきっかけでカンサットのメンバーに入りました。

中山 僕は二人とは違い2年生の後期から参加しました。同じ講義を受けていた友人が講義が終わるといつも楽しそうにカンサットのプロジェクトに参加しているのを見て、カンサットって何だろうと興味がわきました。実際に作業部屋をのぞいたら、講義や実習のときとは異なる“開発の熱気”みたいなものが部屋中に漂っていて、その魅力に一気に引き込まれました。

福守 中山くんはプロジェクトリーダーとして、個性派ぞろいのメンバーをチームとしてまとめてくれました。大会前になるとどうしてもみんな疲れや焦りでピリピリした雰囲気になってしまうことがあるんですけど、僕は中山くんの怒っているところを一度も見たことがありません。どんなときも感情的にならずに、物事を冷静に判断してくれるのでいつも助けられてばかりでしたね。

中山 リーダーとして心がけていたのは全体を俯瞰的に見ること。今大会は、2つの部門に分かれてチームを編成していたので、全体のバランスには細心の注意を払いました。また、機体の完成度をギリギリまで高める粘りと、大会に間に合わせるために必要となる妥協とのバランスも大切にしました。

椎原 チームワークの重要性を私は強く感じました。メンバーに入ったときの先輩が、コミュニケーションを大切にしていました。作業の手順などを教えてくれるのはもちろん、みんなが徹夜が続いて疲れているときに明るく接してくれて。それがすごく励みになったので、私も後輩や仲間に対してその点に気をつけて接しました。

福守 以前は「これやって」「あれやって」と直接的な指示をすることが多かったのですが、ランバック班のリーダーになってからは、後輩にも多くのことを知ってもらおうと、何故この作業をしなければいけないのか。この作業をすることで何につながるのか。明確な理由を説明して指示をするように心がけました。すると、彼らも自分たちで考えて行動してくれるようになり作業がスムーズに進むようになりました。

岡崎 このプロジェクトはあくまでも君たち学生が成長することが目的。苦労して失敗を積み重ねた中で優勝することに意味があります。チーム全員がもっと良いものをつくりたい、次も勝ちたいと思ってほしいので、私が直接的に指示するのではなく、できるだけリーダーと話をするようにしました。

NBU開発の自走式ローバーが目標地点に完全に到達した瞬間(記録0.0m)。

NBU開発の自走式ローバーが目標地点に完全に到達した瞬間(記録0.0m)。

2016年9月19日 大分合同新聞(朝刊)※掲載記事は許諾を受けています。

2016年9月19日 大分合同新聞(朝刊)※掲載記事は許諾を受けています。

カンサットが教えてくれた、開発に必要なこと。

椎原 カンサットのプロジェクトには女子学生が私と1年生の二人だけでした。初めの頃はちゃんと意見を聞いてもらえるか不安だったのですが、男女関係なく意見を言いやすい環境だったので、コンセプトの段階から結構遠慮なく発言させてもらいました(笑)。

福守 確かに、職人気質の椎原さんにはいろんな要求をされた気がします(笑)。でも色々な考え方があった方が機体の完成度は高まるので、後輩たちにもどんどん発言してもらうようにしました。

岡崎 どうしても経験が浅いうちは、話し合うよりも作業を優先してしまうことが多くなるんですよ。しかし、それでは意思疎通が上手くできません。どのように取り組むのかという明確な目標をチーム全員で共有することが開発プロジェクトでは何よりも大切です。

椎原 本当にその通りだと思います。今回も「とりあえずつくってみよう。」と打ち合わせもせずに作業に取り組み始めてしまうことがありましたが、結局は連携が上手くいかず作業時間が長くなってしまって…。それからは話し合いの時間を設けるようにしたのですが、時間を無駄にすることが圧倒的に少なくなりましたね。話し合いの重要性を深く実感することができました。

中山 かねてからの目標であったゼロ距離の記録は福守くんの現地での最終調整の影響が大きかったと思います。本人は控えめなので自分からは言わないんですけど、当日のテスト走行の際に現地の土地のクセや草の生え方を確認して、その状態に合わせてモーターの出力の微調節やプログラムを書き換えたんです。高い技術力と妥協を許さない情熱には脱帽です。

福守 これまでも徹夜を続けながらチーム全員で力を合わせて頑張ってきたので、最後は最高のもので勝負したいと思いました。間に合わせてやる!と思いながらギリギリまでプログラムを書き換えましたね(笑)。

岡崎 運やタイミングも、もちろんあると思いますが、3年前までは10mの範囲内でしか止まれなかったものが、今では2・5mの範囲内の高い確率で止まるようになった。これは明らかにカンサットの性能が上がっている証拠です。あとは、成功の確率を上げる技術の“再現性”が課題だね。

経験を糧に将来を思い描く。

椎原 私は将来、工業高校の教員になりたいと考えています。このカンサットプロジェクトで経験した開発過程の大変さや、成功したときの喜びを今度は私が、岡崎先生のように伝えていきたいです。

福守 小さい頃から宇宙開発に関する研究をしたかったので、カンサットで学んだ、「不具合や失敗をしたときに原因を探りながら解決策をあきらめずに導きだしていく」という強い気持ちを持った研究者になりたいですね。

中山 プロジェクトリーダーとして、開発過程のほとんどに関わることができたことは大きな財産です。将来は、企業で製品開発のプロジェクトマネジメントに携わりたいですね。

岡崎 カンサットはクラブ活動ではなく教育の一環として活動しているので、学生には開発の面白さや感動を味わってほしいですし、時には失敗から多くのことを学んでほしいです。これらの経験が君たちだけでなくチームの成長、さらには日本の宇宙開発を支えるパワーになってほしいですね。

一同 先生の言葉を胸に、これからも熱い気持ちで開発に挑んでいきます。

このエントリーをはてなブックマークに追加

MEMBER

工学部 航空宇宙工学科3年
中山 大輔Daisuke Nakayama
(大分県立日田高校 出身)

いつも笑顔を絶やさずチームのバランスを大切にするプロジェクトリーダー。鋭い観察力と洞察力、さらに冷静な判断力を兼ね備え、チームを大会3連覇に導いた。

工学部 航空宇宙工学科3年
椎原 遥Haruka Shiihara
(大分県立鶴崎工業高校 出身)

工業高校で学んだ技術を武器にNBUに入学。チャレンジ精神と職人気質の高い技術力でチームに貢献。将来は高校教員としてモノづくりの楽しさを伝えたい。

工学部 航空宇宙工学科3年
福守 颯So Fukumori
(高知県立山田高校 出身)

入学当初からカンサットプロジェクトに関わり、今大会では〔ランバック部門〕メンバーをリーダーとして率いて、ゼロ距離の快挙を達成。静かに闘志を燃やし、歴代のリーダーを支える。チーム愛は人一倍強い。

工学部 航空宇宙工学科 教授
岡崎 覚万Kakuma Okazaki

航空宇宙の分野の企業で約30年間、人工衛星の開発に携わる。小惑星探査機「はやぶさ」など、最先端の宇宙開発プロジェクトに関わり日本の宇宙開発を牽引。その経験の中で得た感動を学生たちとともに味わおうと、NBUに着任した2012年4月からカンサットプロジェクトを指導している。